第二話 終わりなき生−其の四− (2003年11月16日)


地下三階へと続く魔法陣をくぐると、
とたんに迷宮内の空気が冷たくなった。
生者を拒む冷気。

そう、この階から先はもう、Deceitの主の領域なのだ。

亡霊どもをなぎ倒し、
いくつもの曲がり角を曲がり、
狭い通路を延々と歩くと、大きな広間に出た。

積み重なる髑髏。
煙を上げる魔法陣。
不気味に輝く地面の古代文字。
そして、謎の沼地。

見慣れぬ光景にパーティの誰もが目を奪われた。
そのとき俺たちの前、そして左右から火炎が飛んできた。
Cryssは盾で炎を受け止め、ツルハシを構えて炎を投げつけた者に走る。
後ろで呪文を詠唱し出すKASUMI。
前方でCryssと切り結んでいる相手は、やはり、Lichである。
その呪文は高い威力を誇り、幾度もCryssの肌を焼く。
だが、Cryssも死者を統べるNecromancerだ。
Lichの出す死者の香りを吸うのか、一瞬で火傷を消している。さすがだ。

Cryssの肩越しにはStuartが見える。
Stuartは元来シーフであり、紆余曲折を経て泥棒家業からは足を洗ったものの、
元来こういった修羅場には慣れていない。
そのためもあってかおっかなびっくり、といった表情をしつつも、
襲いかかる敵の眼前で、絶妙なタイミングで姿を隠し、
面食らったLichに死角から火炎を浴びせている。

俺も負けてはいられない。
Lichどもの産業廃棄物なのか?
視界に入ったPoison Elementalに向かったときだった。

地下二階で戦っていた若者が二人、
もの凄い勢いで部屋に駆け込み、
瞬く間にLichどもを薙ぎ倒した。

・・・これが若さというものか。

あまりに急な展開に俺たちは完全に虚を衝かれた。

彼らは一言も発せず、さらに深淵へと駆け抜けていった。
階下からは彼らの剣戟の音、そしてOstardの嘶き声が聞こえてくる。

確かにDeceit、特にこのLichの間はかつて、手練れの戦士たちにとっての稼ぎ場であった。
しかし時代が流れるにつれ、財宝もあらかた荒らされ、
少しずつ冒険者の足も遠のいていった。
それでも、確かに血気盛んな若者にとっては、Deceitは適度な稼ぎ場なのかもしれない。

しかし、俺の経験から言うならば、
ここまでが「稼ぎ場」だ。
ここから先に待っているのは、ただ、恐ろしき魔力と、強力な牙。
そして、死。

俺は彼らを止めるべきだったのか。
彼らについて走るべきだったのか。
迷っている間にも倒されたLichが再び起きあがり、俺たちに襲いかかって来る。
俺は剣を振るい、Cryssはツルハシを叩きつけ、
KASUMIとStuartはFire Ballで火葬に処した。
何度も。

起きあがった躯は次々と沈黙した。

ふとStuartが耳をすます。

Stuart「静かになったね・・」

KASUMI「そろそろ行っていいんじゃない?」

おもむろに地下4階への階段を降りた。

目に入ったものは、最深部へ続く通路に続く鋼鉄のドアへUnlockの呪法をかける若者の姿。
鈍く軋む音がして、その背後への闇が見える。
歓声を上げ、通路に流れ込む若者たち。
俺たちも慌てて後を追った。

そして最深部。
ブリタニア創世以来、多くの冒険者を食らった部屋が見える。

先に走り込んだ若者たちに襲いかかる銀色の牙。
紅蓮の炎。
悲鳴をあげる間もなく、彼らは絶命した。

Deceitの主、Lich Lordの眼球のない目が俺たちに向く。

目を奪われている場合ではない。
ここでは迷いはそのまま、死に繋がるのだ。
俺は愛用の無銘の刀を手に取り、
Lich Lordに一閃、
返す刀で足下の大蛇に2連撃を見舞った。
後ろからはCryssが雄叫びを上げ、銀のツルハシをLich Lordに振り下ろす。

多少の傷は気にしてはいられない。
俺とCryssはKASUMIに命を預けた。
大蛇の牙に鎧を貫かれても、その傷はKASUMIのGreater Healによって一瞬でふさがる。

こうなるとKASUMIは強い。
毒に冒されたCryssにCure→Greater Heal、
その背後に迫るLich LordにExplosion→Energy Bolt。
俺がとどめを刺しあぐむSilver SerpentにLightning。
四方八方に様々な呪文を飛ばす。
呪文によるコンボを楽しんでいるようで、
その表情は活き活きと輝いている。

一時の戦闘の後、Lich LordとSilver Serpentを地に倒すことができた。

前評判通り、この部屋には宝箱が多い。
次から次へと見つかる宝箱。
ロックピックを壊しながらも、Stuartは次々とこじ開けていく。

Lich Lord・LichはCryssが、
Silver Serpentは俺が屠った。
1対1の状態に持ち込めれば、俺たちの敵では無いのだ。

・・・しばらくの後。

俺たちは生者であり、
彼の者たちは死者である。
俺たちは疲労するが、奴らに疲れはない。

この差が次第に次第に、出始めてきた。

俺が何匹目か分からないSilver Serpentを切り倒した直後、
倒したばかりのLich Lordが再び起きあがった。
即座に召喚されるSilver Serpent。
あろう事か奴らはともに、
俺と同じくときにLichを倒したばかりでツルハシにもたれていたCryssに襲いかかったのだ!

俺「Cryss!」

駆け寄ろうとした俺の前にもLichが立ちふさがり、
歯のない口で呪文を唱える。
先の戦いの傷がまだ癒えていない俺を火柱が包む。
片膝をつく俺。
視界の先にはSilver Serpentに締め上げられるCryssが見える。
四肢の骨が砕ける音。
KASUMIの位置からではCryssには魔法が届かない。

絶体絶命。

瞬間、俺とCryssの体が同時に光に包まれた。
体力が戻ってくるのを感じつつ・・
辺りを見渡す俺とCryssの先で、物陰から飄々と姿を現したStuartが親指を立てた。
俺にGreater HealをかけたKASUMIは矢継ぎ早に火の玉を飛ばし、Lichを退ける。
生き延びた。

渾身の力を振り絞り、Holy Lightを唱え、一面の敵に打撃を与えると、
Cryssが身体から離れた銀蛇の頭にツルハシを叩きつける。
KASUMIは両の手からEnergy Boltを飛ばし、とどめを刺した。

そろそろ引き時だな。

KASUMIのゲートをくぐり、無事帰還することが出来た。

KASUMI宅にて。
冒険の興奮が冷めぬまま、時間を忘れて歓談に興じた・・。


結局のところ、
破邪の力を持つ銀製の武器でも、
全てを殲滅する魔導士の魔法でも、
永遠を「生きる」彼らの時を止めてやることはできないのだった。

だが、繰り返す時を選び、
ただただ生者を喰らおうとする彼らの「生」に、俺たちは輝きを見出さなかった。
死と隣り合わせの地で己の力を出そうとし、
そしてまた互いの力を引き出そうとした俺たちの「生き様」に、
彼らは何を思うのだろう?

得た財宝は前評判に違わず、それなりの代物であった。
KASUMIの家の机に積まれた財宝を眺めながら、
「財宝を集めることが彼らの生の目的なのだろうか?」
という疑問が俺の頭に過ぎった。


戦利品:約15000GP
     ワンド1本、幸運+60のプレート手・首、盾数枚、宝石

合計死亡回数:0














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